Owner's words

室内ベンチレーション

 

 

 
 
空調のスイッチが付いていない車は無いと思います。 

暑い時、寒い時、窓が曇った時、当然の様にスイッチを入れて、それら問題を解決します。 
ですから、私の車では、空調スイッチがOFFになっているのを見る事は希です。エアコンのスイッチは別として、空気を送り出す為のファンは、常に回っている状態です。 

車を選ぶ場合、ダッシュボードのデザインを気にする人は沢山いても、ベンチレーションを気にする人は少ないと感じます。デザイン最高でベンチレーション最悪の車か、デザイン最悪でベンチレーション最高の車のどちらかを選択しなければならなくなった場合、デザイン最高の車の方を選択したくなるのが人情です。ちなみに、私もそうするかもしれません。 

そんなベンチレーションは、車を選ぶ際には見落とされがちな事なのですが、これの善し悪しは、悪条件で車を運転する際にはとても大切な事なのです。 

その大切さを、私は『ビート』から学びました。 
 


 
空気の吹き出し口は、大きく分類すると3個所あります。ダッシュボードの上、前面、足元です。 

ダッシュボードの上と足元の吹き出し口については、どの車も似たような位置にありますが、ダッシュボード前面の吹き出し口だけは、インパネのデザインによってかなり位置や個数が違ってきます。 
しかし、この吹き出し口からの風は、運転者にとってみれば直接感じる風になりますから、これが悪いと運転自体が不快適になってしまいます。夏場は特にそうです。 

ビートという車は、このベンチレーションが素晴らしく良い車です。 
オープン・カーは屋根が開くから、ベンチレーションなんかは気にする必要が無い…… とか思われがちですが、それは全くの誤りで、オープン・カーでこれが悪いと、せっかくのオープン・エア・モータリングを快適に楽しめなくなってしまいます。 
ホンダは、オープン・カーを古くから設計してきたメーカーだけあって、この事を良く知っています。さすがはホンダです。 

では、ビートのベンチレーションは何処が良いのでしょう。 
それは、インパネの真ん中に大きな吹き出し口がある事と、風量(ファンモーター)がパワフルな所です。 
「なんだ、それだけ?」とツッコミが入りそうですが、実はこれが、非常に、本当に非常に大切な事なのです。この設計に慣れてしまうと、他の設計が許せなくなってしまうから不思議です。 
 


 

< 上画像はAZ−1 >

例えば、天井をガラスで設計しておいて、ベンチレーションに一切の気をつかわなかった(こうとしか思えない)AZ−1に乗ると、ビートの素晴らしさを改めて実感します。 

AZ−1はインパネ中央の吹き出し口が、1つしかありません。しかも、かなり助手席よりに付いていて、小さい吹き出し口です。 
AZ−1で晴天の中を走ると、室内温度は相当に上がります。窓の無いAZ−1ですから、エアコンを付ける事になります。しかし、吹き出し口はかなり小さく絶対的な風量が不足し、挙げ句の果てにドライバーへは風があたりませんから、コックピット内は灼熱地獄と化します。 
AZ−1オーナーはこれを少しでも改善しようと、せっかくのガラス・ルーフにサンシェードを付けます。もったいない話です。ベンチレーションさえ良ければ、スリットの入ったルーフからの適度な光を楽しみながら、快適に運転できるはずなのに…… 
 


 
ベンチレーションで大切な事は、室内を均等に温度管理できるだけの性能があるかどうかです。

オープン・カーの場合、室内と室外の境が無くなりますから、この性能にプラスして、いかにドライバーへ快適な印象を与えるかが加わります。 
ビートは不思議な車で、真夏でも真冬でも、幌を開けて快適に走れます。 

真夏にオープンで走っても、日焼けはしますが、汗をかかないから不思議です。これは、除湿されたエアコンの風が充分にドライバーにあたっているからだと思います。 
真冬にオープンで走っても、寒くありませんから不思議です。これは、足元からの暖かい風が充分に室内を満たすからだと思います。 
室内への風の巻き込み以上の、車の空調の風量がドライバーをとても快適にしてくれるのです。 
つまり、吹き出し口の大きさと位置、そして、風量の多さという簡単な事が室内ベンチレーションの基本性能を決めるのです。 
私の価値観での話ですが、私の知る限り、ビート以上の空調システムを持つ国産車は、数台しかありません。 

オープン・カーに限らず、車の基本性能とも呼べるこれを良くしようと思えば、ダッシュボードのデザインを著しく限定してしまうのも事実です。
しかし、窓の面積の大きい車(ほとんどの車ですね)や屋根から光を取り入れる設計の車は、これをしっかりしておかないと、設計当初のコンセプトとは間違った使われ方をする、意味の無い車になってしまいます。 

ビートがこれほど支持されて、誰にでも快適にオープン・エア・モータリングを楽しめるのも、この車のベンチレーションの素晴らしさが一役かっている事は、間違いの無い事実です。 
 


 
 
 
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